門上武司のおいしさ求めて
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「いもすじねぎ玉」ほくほくしてコクも
大阪生まれ、大阪育ちの僕にとって長い間、お好み焼きの王道は「豚玉」であった。
今もその思いは変わらないが、ある時期からジャガイモや牛すじ、天ぷらなどをトッピングするお好み焼きにも心を奪われるようになっ た。
おそらく20年近く前に「桃太郎」という一軒のお好み焼き屋で食べた「いもすじねぎ玉」がきっかけである。
今は地下鉄・新深江の駅そばにあるが、そのころは生野区桃谷に近いお好み焼き密集地帯にあった。
そこでいもすじねぎ玉やいも豚天玉などを食べるために、北区にある事務所からよくクルマを走らせたものだ。
なにせジャガイモがゴロゴロと入ったお好み焼きは初体験である。
このジャガイモは、ほくほくとして生地と見事な調和をみせる。
この食感がひとつ加わることで、こんなに味わいに深みと膨らみがでるのかと驚いたのであった。
牛すじも同様である。食感とともに口の中で崩れてゆくときに甘みと旨みを感じるのだ。
食べる場所によって印象が少しずつ異なるのだが、一枚食べ終わると「いもすじねぎ玉」としてのおいしさがインプットされるのだ。
また天ぷらが入ることによって油分がプラスされコクと旨みを強く感じるようになる。
「気がつけば25年以上、お好み焼きを焼いています。 豚玉はやはり完成されたl枚だと思うのですが、そこに何をプラスするか、それを作り上げるというか、お客さんとの会話から生まれるメニューも多いんです」と砂田さんは話してくれた。
じつは、この店のトッビングメニューは食べ手のリクエストから誕生したものも少なくない。
食べる側は、ただアイディアを投げかけるだけだ。
それを一校のお好み焼きとして完成させるにはトッピングの分量やタイミングなど、緻密な計算が必要となってくる。
それをやってのけるのが「桃太郎」の実力であり、二代目はそれをずっと守り続けているのだ。
場所が移転しようとも、ここのお好み焼きを愛する気持ちは変わらない。
文・かどかみ たけし
(食雑誌「あまから手帖」編集主幹 https://www.amakaratecho.jp/