相羽秋夫-大阪日日新聞

スターが通うお好み焼き

スター通うお好み焼き

名物「いもすじねぎ玉」と女将お勧めの「ミックス焼」


鬼ケ島から帰った桃太郎は、戦利金で毎日遊び耽(ふけ)る。そこで育ての祖父母が「嫁を貰(もら)えば品行が改まる」と思い結婚させるが、それもダメだ。

ついには村人に疎(うと)まれ桃太郎夫婦は山へと逃げる。

そこで女房が産気付き、男の子を産み落とすも、桃太郎は子ども嫌いで桃の中に入れて川に流す。

それを川下で洗濯をしていたおばあさんが拾う

。話が振り出しに戻る“廻(まわ)りオチ”の創作落語「その後の桃太郎」で、一昨年夏に亡くなった6代目笑福亭松喬の作品である。


お好み焼(やき)「桃太郎」の一押しメニューは、スライスしたじゃがいもと、すじ肉・卵・キャベツ・青ネギで焼く「いもすじねぎ玉」(1060円・全て税込み)だ。

創業当初からこの味を愛する上方落語協会会長の6代桂文枝の「ポテトのお好み焼は芋(い~も)のだ」というシャレた自筆の額が飾ってある。


お笑いタレント坂田利夫考案の「アホの坂田焼」(1340円)は、あさりのア、ホタテ貝柱のホ、鰹節(かつぶし)の魚をサカタと掛けたご本人自慢のネーミングメニューである。


俳優赤井英和、歌手中村美律子も足しげく通う味の魅力は、一に他店よりワンランク上の素材、二にプライベートブランド(特注)のソースにある。

その上に、母の後を継いだ2代目女将(おかみ)砂田美代子さんの人柄も大きい。

その女将推薦のメニューは烏賊(いか)・海老(えび)・卵の「ミックス焼」(1260円)。

一応メニュー表には40種ほど書いてあるが、希望のトッピング次第で、自在の組み合わせが可能である。

「これがホンマの“お好み”焼きや」と女将は顔をほころばす。


他に焼きそば、俗にオムソバと呼ばれるそばロールが、この店のメニュー3本柱である。


60席の広い店内でも午後6時を過ぎると行列ができる。「5時までにお越しやす」とうれしい悲鳴を上げる。


おごらぬ女将を、その後の桃太郎も見習ってほしい。

(演芸評論家)相羽秋夫